なんとなく、テーマ(?)がストレスだった。
八王子から2週間ぶりの公演、GWを含むその間、ずっと映画の撮影漬けだったと話す。
におわすだけで止めていたけれど、ロケバスがGWの渋滞に何度も巻き込まれたようで、「その時間がもったいない」と、彼のイライラの原因になっていたようだ。普段、車を運転しない人がGWは高速に乗る、とも。
(しかし、GWは観客にとって楽しい思い出がたくさんあるはずなので、そこに触れそうになるたびに、はぐらかしていた)
睡眠時間も、3時間、4時間などが不規則で続いたそう。
み「今日は10時間寝たけど」
そんな疲れとストレスいっぱいだった日々をぶつけるような、
「いつもは、みんなからの愛を受け止めて、僕が、輝く! だけど今日は…僕が自ら輝く!」
\きゃー/
というスタート。
奇しくも愛哲で、「仕事でイライラすることがあっても、自分の中へおさめてしまう。どう昇華したらいいか」という質問がきた。今日はストレスネタ三昧だ。
みっちーは、「イイ質問!」と非常に真面目に答えていた。
いや、答えようとしていたけれど、答えが出なかった。「美しいものを見る」と言っていたか。
後述するが、このときにはもうとっくに、彼は壊れていたのだ。
ライブ終盤には、「そうだ、ストレスを『みっちー』って叫んで愛に変えればいいんだよ! そうすれば良い循環になる」と言っていた。
さて。
ネタバレなので記事をたたむ。
あ、ワタクシは以前と変わらず、ネタバレNG派です。
しかし、これを書かないと前に進めない、という時がある。
今回の川崎が、それだ。
今回、彼がリミッターをガツッと外したのは、『瞬きのあいだに。』だった。
たぶん、本人もここで外すとは思っていなかったのではないか。1部のバラードでなんて早すぎる。
私は初日と八王子、そして今回の川崎に行ったのだが、新譜を聴いたとき、初日にこの曲を生で聞いたらきっと涙が止まらないのだろうなと思っていた。
だが、意外や泣くまでには至らなかったのだ。
そんな自分に、感性が鈍いと少なからずショックを受けていたところ、同行の友人が、「これからこの曲に思い出ができていくんでしょ」と言ってくれた。
そうしたら八王子では、じんわりと涙が出てきて、なんだか不思議な気持ちでいた。
そして川崎。今回も泣いちゃうかもな、と思っていた私は、見事に裏切られる。
初日と八王子、こんな歌い方だったっけ!? あれ!?
曲が高まるにつれ、音に翻弄されるような激しい歌唱。
歌が体を突き動かすのだといわんばかりに力強く体を律動させる。
バンドメンバーとのアイコンタクトは、はっきりとわかるほど。
バンドからはホーン隊と女子がいなくて、男性だけの構成で硬派だ。なんだか音も厳しめな気がする。
青いライトがグリーンに変わる中を、白い衣装のみっちーが魂をほとばしらせるように体を翻す!
いつもの、くるっというのより、ゆっくりに見えた。
すごく、すごく激しい、『瞬き~』だった。
その後の、『バラのブレス』では、超下手、かなり前ベイベーのワタクシ、手を伸ばすくしゃくしゃの笑顔のみっちーと、がっつり目が合いました。
後のMCで話していたのだけれど、『瞬き~』で自分のすべて放出してしまい、それ以降(『バラのブレス』以降)は、みんなの愛を吸い取って歌ったそうだ。
そうだろう。
1部の『瞬き~』で早々に全力を出してしまったのは、その後の愛哲でもわかった。トークにキレがない。
引いた質問のどれにも、「雨ですね」というのがあって、それは笑っていたけれど、回答に冗談をほとんど絡めず、何度も言葉を詰まらせる。
みっちーは、どこかスイッチが変わってしまったまま、戻ってきていないのがよくわかった。歌に集中しているのだろう、結局これは最後まで続いた。
呼びかけで、「初心者!」というのもあったし、「3階!」というのもあったが、「3階」のあと、「2階」「1階」が、ちょいちょいなかった。
あーそこまで頭が回ってないんだなあ。
体中が歌と音楽に溢れているのが見て取れ、もう愛しくてたまらない。
この日の『瞬き~』が帰結した、と思ったのは、3部の1曲目の『流星』だ。どちらも「流れ星」というワードが入っている。
『流星』の求め、あがき、手を伸ばす歌詞が、この日の振りきった公演そのものを表しているかのようだった。
「ああ、ここへ帰るのか」と、アーティストの身のうちに吹き荒れる嵐に触れた思いがした。
そしていちばん最後。
挨拶をして「えー」っと言われた後の曲、『シャイニングスター』をこなしたみっちーは、もう声も出せなかった。目はうつろ、口を開き、顔に幾筋もの汗を滴らせて体を二つに折ったまま、よろめきながら下手へ来たのだ。私の少し前にある、下手のアンプは手をつける高さにあり、それをめがけて、ふらふらと手を伸ばすみっちー。
手をつくと、カクッと顔を伏せた。私は体も顔も起こせない、汗でびっしょりの頭を、ただ、ただ真正面から見つめていた。
少し顔をあげると、また大量の汗が、真っ白い顔に何筋も流れていく。
そのあと、うしろからみとも氏が水を手渡していたのだが、飲んだ様子は覚えていない。
みっちーは体を折ったまま後ろを向き、理枝さんにマイクを差し出して「りえ、やって」。
理枝さんがメンバーの名前をコールしている間、小さな台座を用意されたみっちーは、そこにちょこんと腰かけ、汗を拭き、メンバー紹介を見ていた。ような顔をして、コンディションを整えていた。
最後に立ち上がったときには、背筋が伸び、いつもの美しい横顔をタオルで拭くと、それを会場へむけて放った。
み「酸素! 酸素が欲しい! マウストゥマウスしてくれる人ー」
ワタクシ「はああああああい!!!!!」
アーティストの矜持には、愛を以て応える。
舞台袖に消えるみっちーは、手を少し上げて客席に挨拶をしていたけれど、視線は振り返らなかった。きっと朦朧としていて、歩くのもままならなかったはずだ。