旅の思い出はたくさんありますが、最後の最後にしたハグが極上でした。
直前まで舞い上がっていて、何を言おうか同行のN、Mと騒いでいたのだけれど、彼の前に立ち、ニコニコした笑顔を見たら自然に
「また逢いましょうね」
と言っていました。
自分でも驚くくらい、落ち着いた声で。
彼は何か言い、私に向かって手を広げた、と思います。
考えるより早く私の身体は反応し、少し背筋を伸ばして身体を彼の胸に預け、右手を彼の背に回して優しく抱きしめていました。(左手はバッグを持っていた)
すぐに身体を離したので触れ合ったのはほんの一瞬でしたが、自分史上、最高にエレガントに振る舞えたと思います。
次の瞬間、そうだ、こっちはじっとしてなきゃダメだったんだ、と思い出して、「ごめん、手、回しちゃった」と言ったら彼は「いいよ」というように、喉の奥の方で「フフッ」と笑いました。
ハグの前も後もずっと見つめ合っていたので、彼が本当に気にしていないこと、このハグがとても上手にできたこと、それによって、お互いに親愛の気持ちを伝え合えたことがわかりました。
彼は私が前に立ったときから最後までずっとずっと、目を細めたくしゃっとした顔で笑っていた。
とても優しかった。
別れが寂しいというより、わかり合えて嬉しいという、とても満ち足りた気持ちで会場を後にしました。
右腕に残る、抱き寄せたときに感じた彼の熱い背中。
一瞬、密に触れ合った互いの無防備な胸元。
透明に結晶した気持ちの中に残る熱量は、
これは
キスに似ている。
あとからMが「大丈夫って言ってたよ」と教えてくれました。
目を合わせたり、触れ合ったときに、
緊張して暴走したり、はしゃいだり固まったりせず、
一人の大切な人として接することができた。
最後の夜の、極上のハグでした。