クローンは故郷をめざす 感想

古い作品なのでネタばれしてまーす。
どこか大学のSF研8ミリ自主制作映画的匂いのする、そういう意味でワタクシにとって郷愁を誘う映画でした。耕平1(オリジナル)の子どもの頃の強い思い出(故郷)の情景と相まって、とくにそう感じました。
この物語で印象的だったのは、宇宙服の使われ方です。
耕平2(1体目のクローン)に背負われる宇宙服というのは、共鳴の象徴。
耕平2が耕平1との共鳴を起こし、彼にだけ見えるようになった。
中には耕平1がおり、人ひとり分の重みも伴う。
途中でスクラップ場を通りかかった時に、そこの人に「盗んだ」と罵られ、取り上げられてしまうところ。映像では耕平2の視点から宇宙服に見えるけれど、実際には何かそこらへんから拾ったガラクタを背負っていたのだと思われる。
共鳴の象徴だからスクラップ場で失っても、その後野宿しているときにイメージが具現化し、またそれを背負えるようになった。
そう考えていくと、耕平1と共鳴しない耕平3は、同一人物だから共鳴の残骸(宇宙服)を見ることはできても、その中に1を見出だすことはない。耕平3が見た宇宙服は空だったし。
それとも彼(耕平3)にとって宇宙服は、耕平2との共鳴なのかなあ。
いや、耕平3にとって、耕平2は「登」だったのではないだろうか。
同じ顔を持ち、自分とは違う行動を取った、手に傷のない男。
意識なく横たわっていた男は、耕平3にとって登以外の何者でもない。
耕平は、登の埋葬をしたのだ。
ならば耕平2にとって耕平1とは?
彼は誰?
考えるうちに、耕平がどんどん入れ子になっていくのを感じ、まるでミラーハウスに閉じ込められたかのような感覚に陥りました。懐かしいこの感覚。Sense of Wonder。
最後、手の甲に浮かび上がった傷は、耕平3が1と共鳴した証であり、耕平3にしか見えない刻印だと思う。
中身のない宇宙服はずっしりと重く。
手には印を刻まれ。
十字架を背負い歩くキリストのように、
新たな罪を背負って果てのない道を歩き続ける。故郷から遠ざかるように。
もしも耕平3が再び宇宙で事故にあい、命を落としたとしても、
次の耕平が、そしてまた次の耕平が生まれるだろう。
誰が罪を負わせたのかはわからないが、
彼は赦されることなく、歩き続けなくてはならない。
というところでパッケージにDVDを戻そうとしたら、キャッチコピーが
 

「僕は生き続けなければならない」

とあって、おお!と思った。
しかし「生き続けなければならない」は、これだけだと自分の意志のように感じるが、私の解釈では背負わされたものなので、どっちがどーなのか。
そうしてまた、“SF”の後味をしみじみと堪能する。
 

* * *

と、そんなことを考えつつ、逃しませんよ!! ええ抜かりはありません!
【クローン、ワタクシ的見どころはココ!!】
●ベスト!! 病室で目覚めたばかりのクローンの、イノセントな眼差しと表情。
この後、記憶に混乱をきたし始め、徐々に顔が歪み出すんだけど、その前の表情が素晴らしいです! 知性は感じるけど意思はない。瞳がうつろで何も映っていないの。このシーンはワタクシの中のベストワン賞。すごく胸を打たれる。そして物語を離れて一介のベイベーとして見ても、「イイ!!」です。おおおおワタクシの中でうねりを上げる業火に燃料投下ーーー!! 世のすべて燃やしつくしてしまええええ!! 炙られるのはむしろワタクシかーーーー!
●もっしもっしと、おにぎりを食べる姿。
かかかかんわえええええええええ!! なんじゃこりゃーー。
●医者はどこだ。
ねじ式ポーズで病室を抜け出す。真面目なシーンなのにちょっと笑っちゃった。
●病床の母に声をかける。
声色が堪りません! みっちーの(いや、みっちーじゃないんだけど)親密な時の声の出し方に、ワタクシ毎度魂を持ってかれます。まー演技の中でしか聞くことは叶わないわけで、これが本当に本物の「親密な声」なのか、演技なのか知る術を僕は知らないのですが、ともかくイイ!! 何度でも巻き戻し、耳の中で転がしたい!
●宇宙服を取られてオロオロする
かわええええよおおおおおお。ああオロオロさせたい。みっちー自身はこのDVDの特典の方で「僕はSなので」と言ってましたが、Sな人をエm…いや、ワタクシの個人的な性癖はともかく、このオロオロっぷりは構いたくなりますね!
 

* * *

耕平3のインストールが成功したという保証はどこにもありません。
ファイナライズするときにエラーになってしまい、鳥よけにしか使えないCD-ROMのようなエラー耕平が量産される可能性は多いにあります。実際、1体は失敗してるわけだし。エラーとはいえ軽々しく処分というわけにもいかず、いずれ集めてどこかへ収容されるということになるでしょう。物語内では人権問題のデモがちらと映っていましたしね。
 

耕平牧場。

ふにゃふにゃの耕平とか、いたずら好きでやんちゃな耕平とか、罪の意識に溺れる耕平とか、たくさんの耕平が暮らす、そこはパラダイス。おおおぜひワタクシがお世話を!!!

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