きれいに消えた私の極上の恋人。

 2011/05/15 NHKホール

「遠隔ハグしよう。
優しく抱きしめるからね。
遠隔~っ ハグ」
ふわっと抱きしめられたまま数秒の間をおいて
耳元に低い声が。
「おやすみ」
そしてさっと、後も振り返らずに退場。
いつものようなキスもなく
私の中に面影と深い余韻を残したまま。
「目が合った」とか、「近い!」とか
すべてどこかへいってしまった。
大人の恋。は、最後までスマートなエスコートだった。
15日のNHKホールは安定していた。
すべてが彼のコントロール下にあった。
みっちーが高揚の果てに崩壊していってしまうようなライヴもいいけれど、
そういうのはハプニング(お宝)だからいいのであって、
毎回そうでなくてもいい。…ちょっとはあってもいいけど。
「みっちーが意図したステージワーク」が、見たい。
私は爪の先まで染め上げられたベイベーなのだ。
そういった意味で15日は、デートのエスコートはすべて殿方にお任せして、私はリラックスしてその時間を楽しむ、というスタンスの、理想的な一夜だった。
少し見慣れたオープニング。
執事が深々と一礼し、かの人の到着を告げる。
扉が開くと、真紅のトレンチに白のスーツ。帽子を深く被った彼の姿が。
近い…!
ああ、この人、生きた人間なんだ、と思う。
そう思うのは、少し、さびしい。
なぜなら、生きた人間がそこにいて、決して触れることができないからだ。
こんなにも愛し愛されているのになあ。
心の距離が近くて、肉体的にも近いのになあ。
「さまざまな大人の恋。の形をご覧ください」
そうして繰り広げられたこの夜の物語については割愛する。
ラヴストーリーとその合間をつなぐ巧みな話術、こちらへ向き合う真摯な態度、泣いたラストの「Song for you」、手をつないで大きく振って歩くKRと私を彼がにっこり笑って、見たこと。
何よりも雄弁だった彼からしたたり落ち続ける汗。
そんないろいろなことがあった素敵な夜は、最後の最後にきれいにたたまれて、彼の胸ポケットへ納められてしまった。
「今夜もあなたの恋泥棒」
まんまと私の大切なものを盗みだし、
代わりに私の中をあなたで満たし、

そしてするりと、消えた。 

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